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2010年10月17日 (日)

ある訃報

一般的な知名度はそれほど高くないかもしれないが、昨日の朝日新聞でノンフィクション作家の加藤仁さんが亡くなっていたことを知ってショックを受けた。土曜日に入る「Be」という別刷りのページがあるのだが、その中の「再読 こんな時こんな本」のコーナーに、同氏の『定年からの旅行術』が紹介されていたのを何気なく読んでいたら、「その加藤さんはこの『旅行術』を出して3カ月後、脳腫瘍で亡くなった。」とあったので仰天した。

加藤仁さん——お若いころは(山口)百恵ちゃんのインタビュー記事も書いたことがあるとずっと昔奥様から聞いた記憶があるのだが、ある年代からは定年や定年後の生活、定年の準備など、「定年」にまつわるあれこれをライフワークにされていた。取材を重ねて本を何冊も書かれていたし(何冊かは読んだことがある)、NHKの情報番組にも時折出演されていて、たまたまお見かけすると「あ、加藤さんだ!」と懐かしく拝見していた。

というのも、加藤さんとは一時期ご近所だったからだ(わが家のすじむかいにお住まいだった)。わが家は20軒ほどの建て売り住宅地の一角で、ほぼ同時に入居した住人はほとんどが同世代で、子供の年齢も似たり寄ったりだった。加藤家のお子さんは二人。下の男の子がわが家の長女よりひとつ上だったから、小さいころはよい遊び友だちだった。

いつも穏やかで優しいお人柄だったが、今になっても忘れられない、大変お世話になった思い出がひとつだけある。長女が1歳数カ月だった秋のこと、夫がヨーロッパに2週間程度の出張に行き、その間、私は娘を連れて実家に帰ることにしていた。明日は実家に帰るという日の朝、テラスで洗濯物を干していたら、部屋の中にいた娘がサッシ(娘が落ちるといけないので窓を閉めていた)のクレセント錠を閉め、あろうことかロックをかけてしまったのだ。窓のロックはクレセント錠のところからストンと下に落とす方式で、1歳の幼児の力では落とすことはできてもそれを持ち上げてはめることができない。私は外に締め出されてしまったわけだ。何か異常を察して泣き叫ぶ娘。焦るわたし。出入りできるところは、玄関はもちろん窓もすべて鍵がかかっている中で、浴室の窓だけが換気のために開けてあった。だが高いところにあるし、格子がはまっている。

困ったわたしは、そのときたまたま庭に出ておられた加藤さんご夫妻に助けを求めた。自由業だったご主人が家におられたのは幸運だった。すぐに脚立を持ってきて窓の格子をはずし(あれは四隅のねじを外せばすぽっとはずれるのだということを初めて知った^^;)、窓から入って玄関の鍵を開けてくださったのだ。最悪は業者を呼んでガラスを割ってもらわなければならないかと思っていただけに、本当に助かった。(それ以後は、用心のためにリビングにもう1カ所ある掃き出し窓の鍵を必ず開けておくようにした(笑))。

近くの、もう少し東京に近い便利な街に越していかれたのはいつごろだったか忘れてしまったが、たくさん本を出していらっしゃると知ったのはそのあとだった。たぶん「定年」という言葉がそろそろ身近に感じられるようになったころだろう。自由業のご自身に定年はないとはいえ、きっといろんな時間の使い方を考えていらっしゃったに違いない。62歳で逝ってしまわれるとは、あまりに早すぎる。おそらく最後の作品になったと思われる『定年からの旅行術』を読んでみようと思っている。ご冥福を祈りつつ・・・

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